CASE No.5:RANDOM ACT

闇を彷徨い続けた先に、

女はついに光を見つけた。

新宿の居酒屋で、ナンパされたのがきっかけ

普段はナンパなんてついていかないのだが、

彼とは音楽の趣味があった。

そして何とは無しに、

彼は信用できる人間のような気がした。

薄ぼんやりとした光・・・

自分を新たにかくまってくれる男を

見つけた。

暴力で苦しんでいる話をしたら、

彼は一緒に逃げようと言ってくれた。

そして二人、どこまでも、逃げた。

新宿、池袋、赤坂、どこでも行けるところまで行った。

彼が追ってこないところまで

ふざけて名古屋にも行ったことがあった。

ラブホテルを転々とし、

学校にも行かず、

ジプシーみたいな生活だった。

そうして何ヶ月かして、東京に戻った。

彼は、暴力とは無縁の人だった。

いつの間にか一緒に暮らすようになり、

そうして二人の生活が出来上がっていった。

穏やかで、幸せな時間だった。

こんなにも、穏やかで朗らかな男性がいるのかと、

女は心底不思議に思った。

それでも平穏は長くは続かない。

女は長年培った気質のために、

同じところに居続けることを拒んだ。

『同じ世界にいては、芸術がダメになってしまう』

そうしてまた、別れを告げては

新しい旅路へと向かっていくのだった。

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